内容・目次
<内容紹介>
進展著しいAMS法炭素14年代測定の精度向上と、実年代への置き換えを可能とした較正曲線を利用することで、縄紋時代研究に新たな視点を提供する。精緻な縄紋土器編年に実年代としての位置付けをおこなうことはもとより、土器型式細別時期区分に10年単位の実年代推定を比定することで、従来1世代程度の継続期間を想定していた縄紋土器の型式変化が、20年以下の短い変化時間から90年程度の長い継続期間まで、差異が著しいことを明らかにした。さらに、重複住居の年代測定から、竪穴住居改築期間を平均13年程度と推定し、縄紋集落の実像を明らかにする。集落分布の実年代による変化や、人口規模の実時間での変化を検討し、縄紋社会構造解明へと進む研究である。
<目 次>
序章 考古学における時間的属性
1節 縄紋時代研究における年代決定 
a)土器編年の基準 
b)縄紋集落の時期区分基準 
2節 実年代による縄紋社会の時間的属性へのアプローチ 
1章 伝統的手法による研究と問題点 
1節 土器型式の相対編年 
a)前期末葉から中期初頭の土器型式研究 
b)関東・中部地方中期土器の型式学的検討
c)通期的な土器型式学的細別時期設定 
d)土器型式による相対編年の限界 
2節 遺構間の関係にもとづく集落景観復元 
a)竪穴住居・住居跡のライフサイクル 
b)同時存在・同時機能 
c)居住の同時性・一時的景観の復元 
d)現状の集落論の問題点 
2章 年代的枠組みと土器の時間
1節 東日本中期土器の年代的再編成
a)前期末葉と中期初頭の境 -金沢市上安原遺跡の分析- 
b)中期末葉と後期初頭の境-加曽利E式・大木式後半の検討-
c)中期土器型式ごとの暦年較正年代 
d)「焼町土器」の年代的検討 
e)中期土器群の年代的再構成と土器型式の時間幅 
2節 土器の時間 
a)細別型式の異なる土器の共伴と年代測定
b)土器細別時期の時間幅の長短に着いての背景
c)文様の変遷からみた土器変化のスピード
3章 集落の時間 
1節 短期的集落における移動の時間的関係-SFC集落- 
a)SFC集落の暦年較正と集落の年代
b)SFC集落の再構成と集落移動 
2節 継続的集落にみる住居改築の時間幅-大橋集落- 
a)同時存在住居・重複住居の年代 
b)大橋集落における重複住居のあり方
3節 集落の継続期間-多摩ニュータウン遺跡群・津久井川尻遺跡群-
4節 集落の時間 
4章  文化の時間 
1節 文化の伝播 
a)土器の移動 
b)住居型式の移動 
2節 変遷のスピード 
a)土器系統の区分 
b)中期前葉期の土器の分布 
c)炉の分布 
d)文化要素の年間移動距離 
3節 規模の増大と領域の拡大
a)集落の人口-大橋遺跡-
b)地域の人口-武蔵野台地東部-