B5判   381頁  
定価 13,000円+税
ISBN 978-4-86445-076-8   C3022

書店発売日 2016年2月26日
登録日 2016年2月9日

 

紹介

 中国第二の大河である黄河は、中国の民衆や社会に対して大きな恩恵を及ぼしてきた。一方で黄河は「善淤(濁る)、善決(決壊する)、善徙(移動する)」とも称され、決壊による災害を引き起こす恐るべき存在でもあった。そして繰り返される決壊により、黄河の河道は幾度も移動した。ひとたび黄河が移動すると、周辺の農地は荒れ果て、都城は崩壊し、時には行政区画の変更すら起きるなど、中国社会に多大な影響を及ぼしてきた。にも関わらず、これまで黄河の河道変化について詳細な考察は行われていない。
 本書では戦国~前漢末の黄河古河道を対象として、従来の文献資料に基づく検討に加え、衛星画像や地形データ等のリモートセンシングデータ解析および黄河下流平原の現地調査を実施し、現在の地形や地質等の状況を確認したうえで古河道を復元する。また復元した古河道に基づき、当時の社会への影響等に関する再検討を行う。

目次


第1部 前漢期黄河古河道復元に向けて
 第1章 文献資料にみる前漢前後の黄河変遷説
  はじめに
  第1節 黄河改道に関する諸説
  第2節 前漢黄河の開始および終了時期
  第3節 秦漢期黄河治水史
  第4節 前漢河道の位置
  おわりに
 第2章 黄河のすがた
  はじめに
  第1節 黄河の概要
  第2節 黄河の来源
  第3節 黄河の誕生時期
  第4節 黄河下流平原の地形的特性
  第5節 現在の黄河水問題
  おわりに
 第3章 本書における使用資料
  はじめに
  第1節 文献資料
  第2節 地図資料
  第3節 リモートセンシング(RS)データ
  おわりに
第2部 前漢期黄河の地域別検討
 第1章 河南省北東部・滑県~濮陽市
  はじめに
  第1節 文献にみる前漢河道
  第2節 文献記述の検討
  第3節 RSデータ・DEMとの比較
  第4節 綜合考察
  おわりに
 第2章 河北省大名県~館陶県
  はじめに
  第1節 都城の位置比定
  第2節 王莽金堤遺跡
  第3節 RSデータとの比較
  おわりに
 第3章 河南省武陟県~延津県~滑県
  はじめに
  第1節 対象地域の概要
  第2節 文献資料にみる前漢河道
  第3節 RSデータを用いた考察
  おわりに
 第4章 河北省東光県~滄州市~黄驊市~渤海
  はじめに
  第1節 対象地域の概略
  第2節 文献記述の詳細検討
  第3節 地質学的検討
  おわりに
 第5章 山東省聊城市~平原県~徳州市
  はじめに
  第1節 文献資料にみる黄河古河道
  第2節 城市位置の検討
  第3節 RSデータによる検討
  おわりに
第3部 復元古河道を利用した中国古代史の再検討
 第1章 前漢期の黄河決壊に関する一考察
  はじめに
  第1節 復元河道の概要
  第2節 決壊記事の検討─武帝元光3年春以降─
  第3節 黄河決壊の連鎖性
  おわりに
 第2章 「中国古代専制国家の基礎条件」に関する再検討
  はじめに
  第1節 木村説と前漢黄河
  第2節 RSデータを利用して復元した前漢期古河道
  第3節 復元河道に基づく木村説の再検討
  おわりに
 第3章 復元古河道(戦国~前漢末)の検証
  はじめに
  第1節 前漢黄河由来の微高地
  第2節 「沙河」と夏津県の由来
  第3節 本研究で判明した事実
  第4節 黄河改道と前漢郡県制の展開
  第5節 前漢以前の黄河下流平原の実情
  おわりに
補論 現地調査記
 第1章 調査の概要
  はじめに
  第1節 文献記述の整理
  第2節 地図の収集
  第3節 現地にて
  第4節 調査後の情報整理
 第2章 調査記Ⅰ 河南省滑県~濮陽市~南楽県
  はじめに
  1 文献記録と現地調査
  2 前漢黄河と城市位置
  3 古河道の現状
  4 RSデータとの差異
 第3章 調査記Ⅱ 河北省大名県~館陶県
  はじめに
  1 故城関連
  2 古黄河関連
  3 その他
  おわりに
 第4章 調査記Ⅲ 河南省武陟県~延津県~滑県
  はじめに
  1 故城関連
  2 古黄河関連
  おわりに
 第5章 調査記Ⅳ 河北省東光県~滄州市~黄驊市~渤海
  はじめに
  1 故城関連
  2 古黄河関連
  おわりに
 第6章 調査記Ⅴ 山東省聊城市~高唐県~平原県~徳州市
  はじめに
  1 対象地域の特徴
  2 故城関連
  3 黄河関連その他
あとがき
初出一覧
参考文献
RSデータ関連クレジット
図表出典一覧
索引
中文要旨

著者プロフィール

長谷川順二(ハセガワジュンジ)

2000年学習院大学人文科学研究科史学専攻博士前期課程修了、2006年 学習院大学人文科学研究科史学専攻博士後期課程単位取得退学、2011年博士(史学)取得、現在、学習院大学文学部助教。主要論文に「リモートセンシングデータを利用した前漢期黄河古河道復元─〈中国古代専制国家の基礎条件〉に関する再検討─」『史学雑誌』第123編第3号(2014年3月)、「リモートセンシングデータを用いた黄河古河道復元─後漢初期の第二次改道に関する考察─」『日本秦漢史研究』第15号(2015年3月)、「リモートセンシングデータを利用した『水経注』に記される北魏期黄河古河道研究─河南省濮陽市~山東省東阿県~茌平県~高唐県─」『人文』第14号(2016年3月)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。